山口直哉「森と水の四方山話」vol.04
釣りの帰り道、「そろそろ出てる頃かな〜?」と立ち寄ってみると……出てました!!
このキノコは和名ヤマドリタケモドキ、美味でイタリアンの高級食材としても有名なポルチーニの仲間です。本家ポルチーニ(ヤマドリタケ)がエゾマツやトウヒ等針葉樹の森に生えるのに対し、ヤマドリタケモドキはブナ科のコナラ等の広葉樹林が関係しています。
食感はヤマドリタケに一歩譲りますが、食味は遜色なく、洋風料理に最適の素材と言えます。海老など海の幸との相性も良く、ソテーやパスタはもちろん、カレーに入れてもコクが増し、またビーフシチューやハンバーグのソース等デミグラスソースやトマトソースを簡単にワンランク上に仕立てることができます。
時期は6月下旬から10月まで何度も発生し、しばしば大量に採れることがあります。そのようなときは、小切りにしてから乾燥させ、冷蔵庫に保存すれば長期に渡って楽しむことができます。
乾燥させたものを水で戻し、ただ放り込むだけでコクが増すという、使い勝手の良い大変便利なキノコなのです。また、採れたてを1本ずつラップに包んで冷凍保存にすると、いつでも必要なだけ生で楽しむことができます。
日本にはイタリアンのポルチーニ、フレンチのセップなどと同種、もしくは近種で、同様な味覚、同様な使い方が出来るキノコが、上記のヤマドリタケやヤマドリタケモドキの他、ムラサキヤマドリを加えた3種あります。ただ、珍しいキノコではないのに何故かほとんど流通せず(ムシが入りやすいから?)、自分で採る以外ありません。
ヤマドリタケは本州では富士山や八ヶ岳周辺など、およそ標高1500m以上の亜高山の針葉樹林帯、北東北や北海道ではエゾマツやトドマツの森に発生します。
ヤマドリタケモドキはカシやコナラなどの雑木林の他、神社や公園など、「ええっ!こんな所に!?」という場所で見かけることも多々あります。
ムラサキヤマドリもヤマドリタケモドキと同様な場所に発生します。ただ前種と比べ肉質は硬く締まり上等ですが個体数はやや少ない気がします。いずれの種も傘が開く前が採りごろで、傘が開いたものはムシが入っていることが多く、これは肉質が比較的柔らかいヤマドリタケモドキに顕著です。
次回はミズナラの原生林の番人、オオチャイロハナムグリについてお話ししたいと思います。