鮎の遡上数が前年の10倍に!? 2017年野根川魚類調査結果

私たちが本格的に野根川の鮎やその他の魚類、動植物の生息調査に入ったのは2016年春。
そして2017年の遡上、産卵の調査を終えて調査結果が出ました。

鮎遡上数は前年の10!?

2016年と共に場所と方法で調査しました。
まずは、野根川全体の鮎の数 平均で見て頂くと分かりやすいでしょう。

2016/5/5 平均数(瀬)0.62尾/㎡ → 2017/5/5 (瀬)5.1尾/㎡
〃    (淵)2.0尾/㎡  →       〃       (淵)  8.9尾/㎡

20175月時点での鮎の生息数の推定

河口から徳島県との県境までの野根川本川の鮎の生息数は、約125万尾と推定されました。
さらに鴨田頭首工直下、長峰頭首工直下に滞留している鮎を加えると、130万尾を超えます。
2016年同の時期の推定生息数は14万尾だったので、10倍近い増加となりました。

「鮎が増えた!良かった!」とはならなかった2017

私が目視で確認しても、明らかに遡上数が多かった2017年春。「沢山の鮎が野根川に帰ってきてくれた」と喜んだのも束の間だった。

私たちは「安定的に80万尾の川にする!」というのを野根川の資源目標としていますが、そこに130万尾を超える鮎が遡上するとどうなるでしょうか?

答えは「エサ不足に陥り、鮎が成長しなくなる」。

この結果は、調査報告でもはっきりと示されていました。

こちらの表を見ていただければ一目瞭然です。
2017年5月時点での鮎の大きさを見ると、5~10cmのものが主体です(河口に近いほど小さい)。
一方で、2016年同時期は10~15cmが主体、上流に上るにつれ15~20cmの個体も確認できました。

遡上数を保ちつつ、川の生産能力をあげること(エサ場の整備)が今後の課題となりました。

 

夏! 鮎釣りシーズン到来!!

さっそく竿を担いで野根川へ向かいましたが、鮎の生息数が多すぎて釣れません。私がやっている鮎の友釣りは、仕掛けにオトリ鮎を付け、縄張りを張っている鮎の元へ泳がせ縄張り争い(喧嘩)をさせて針に掛ける釣法。しかし、生息数が多いことが原因で集団行動をしている鮎たちは、縄張りどころか、みんなで仲良く泳いでいます。これでは釣れません。そして釣れたとしても、小さすぎる…。イマイチな結果となりました。

 

禁漁期、そして産卵調査へ

10/16日に野根川は禁漁期に入ります。鮎は腹に卵を抱え下流部に集まり産卵をします。前回のレポートにもありますように、2017年の落ち鮎釣りは押野橋下流が禁漁となり、産卵場所や親鮎の保護を行う中、11月28日に産卵調査へ入りました。

〈2016年、2017年と共に同じポイント、方法で調査〉
調査対象区域は野根大橋(S1)~押野橋(S7)の瀬、7か所を調査しました。

 

産卵が確認された場所は、前年同様(S3)と(S5)でした。
産卵場の面積は(S3)の瀬で460㎡、(S5)の瀬で1060㎡、合計1520㎡。

2016年の産卵場の面積は345㎡だったので、2016年と比較すると2017年の産卵面積は4.5倍に拡大したことになります。2017年10月時点での親鮎数は44.4万尾で、2016年同時期の約5倍であり、面積から見た産卵規模の拡大は親鮎数の増加と概ね整合していました。

親鮎数は5倍ほど増えましたが、サイズが小さいため、期待される産卵数は親鮎の多さほどには増加しないと推測されます。

天然鮎の資源量を増加させるには、産卵場所、親鮎の保護やカワウ対策などを継続させなくてはなりません。

野根川では魚類調査も実施

野根川では現在2つの調査を行っています。ひとつは上記の「鮎の調査」、もうひとつは「魚類調査」です。

「魚類調査」では、サツキマス、アマゴの遡上・産卵調査を主とし、合わせて野根川に生息する全魚種の調査や、4基ある頭首工の魚道が機能しているかを調べています。

2017年に行った調査では環境省のレッドリストにも登録されている「アユカケ」が確認された。その他にもニホンウナギやテナガエビ、ウグイ、ボウズハゼなど多種の魚類が確認されています。また、余家頭首工では鮎、オイカワ、ルリヨシノボリが多数滞留していることが分かりました。魚道になんらかの原因があるのではないか? 改善させるためにはどうすればいいのかを考えなくてはいけません。

あと1カ月ほどで、稚鮎の第1陣が遡上を始めるだろう、魚の目線になってどうしたら堰を越えられるか? どうしたら住みやすい川になるのか? を日々考えています。

現在は大斗第一頭首工の工事も始まっており、他の頭首工も手直しを行っています。


次回は、「野根川にある4基の頭首工」についてレポートさせていただきます。

お楽しみに!!

野根川リバーガイド 御処野 誠

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