3年間の野根川魚類調査レポート!

私たちが野根川の魚類の調査に入ったのは、2016年春~です。

年に2回、遡上調査と産卵調査に入り、野根川の魚類の推移を見てきました。

2016年、初めて野根川の現状を調べた時は、春の遡上鮎数が約14万尾と予想以上に少なかったのを覚えています。この年には「何が原因なのか?」「何を直せば鮎が増えるのか?」を考え、出来ることから行った年でした。

①最下流の堰、鴨田堰の魚道改修、1つ上流にある長峰堰の魚道改修

この2つの魚道が破損していて、魚類の遡上に大きな障害になっていたことが分かり、下流側から改修工事を行いました。

まずは魚類本来の遡上・降海ができる環境を作ることを目指しました。そして、「野根川の鮎を80万尾に」という目標を掲げた年でもありました。

2017年春、2年目の遡上調査では、目標の80万尾を遥かに超える140万尾の鮎が遡上してきました。「たくさんの鮎が野根川に帰ってきた!」と喜んでいたのも束の間でした。

多すぎることにより、次の問題に直面してしまいました。

野根川の適正数80万尾、それはエサの量を見越しての「適正数」でした。

エサの量が決まっている野根川に140万尾もの鮎が遡上してくるとエサの奪い合い、競争が起こり、個体が大きくなれない。夏を越し秋口になっても10cm以下の個体が目立つ年でした。この問題を解決させるには、

①徳島県側にも遡上できるよう、大斗堰の魚道改修を行う。
②鮎のエサ場になるような瀬を増やす。

大斗堰は堰自体が今は使われていなかったので、堰の中央から両岸に8m掘削し、堰を作る前の姿に戻しました。堰をはつったことにより、河床が1.2mほど下がり鮎のエサ場になる瀬が復活しました。

また、この年に野根川漁協と産卵期の落ち鮎釣り禁漁区の設定も行い、親鮎の保護、産卵場所の保護を行いました。

今年、2018年春の遡上調査では、64万尾(河口~県境)の遡上が確認されました。目標としている80万尾は野根川全域の数字であり、河口~県境までの適正数は47万尾です。したがって目標数の1.36倍の鮎が遡上したことになります。前年ほど過剰な数でもなく成長も順調でした。6月1日の解禁日に釣れた鮎は20cmを超える個体もおり、今年の鮎の成長を楽しみにしていました。改修した大斗堰でも多くの鮎が遡上する姿が見られました。そして今は、野根川全体に行きわたった鮎たちがエサとなる良質の苔をたくさん食べ、卵を抱えて河口付近に産卵に下りてくるのを楽しみにしています。

また、野根川には鮎の他にも多種多様な生き物が生息していることが、この調査から分かりました。確認された魚類のうち「アユカケ」は環境省および高知県のレッドデータブックで絶滅危惧Ⅱ類に指定され、各地で個体数が激減し、希少な種となっています。きれいな水でなければ暮らせないという「アユカケ」が当たり前のように生息する野根川は、全国でも数少ない河川になるのではないでしょうか。

年2回行った定置網調査では捕獲されなかった、アマゴ・サツキマスは潜水調査によって野根川上流部・別役川(支流)で生息が確認されました。

確認されたアマゴは銀化しておらずサツキマスは見られませんでしたが、中には婚姻色を示す個体も見られ、河川残留する定着型のアマゴが野根川に生息する事が分かりました。

アマゴも環境省のレッドデータブックで準絶滅危惧種に指定されており、野根川は全国的にも希少な種が多種生息している河川であることが分かりました。

さて、近年「地球温暖化」が深刻な問題になっています。

今年の春、全国の河川で遡上鮎が爆発的に増えた!と各メディアで報道されていました。野根川も同じです。どこの釣り人も漁協も大喜びでしたが・・・

喜んでいる場合ではありません。

稚鮎のふ化期は11月頃(早生まれ)~1月頃(遅生まれ)です。もっとも多いのは早生まれなのですが、近年、春に早生まれの稚鮎が川に帰って来ることは少なくなっています。なぜならば、海水温が高く死んでしまうからです。今年春の遡上数が多かったのは、昨年冬の海水温がたまたま低かったからです(早生まれの鮎が死ななかった)。

「地球温暖化」でなければ、早生まれも遅生まれも生きられるということになります。

もう少しすると産卵のために鮎は川を下り産卵場所に集まります。鮎釣りも10月16日から禁漁となり、12月1日から落ち鮎釣りが解禁になります。

私の勝手な「落ち鮎釣り」の解釈は、産卵を終えた鮎は1年という短い命を終え、死んでいってしまう。その錆色になった鮎を釣るのが「落ち鮎釣り」だと思っています。

さて、この禁漁となる1か月半は一体何のためにあるのでしょうか?答えは「産卵のため」なのです。

しかし、上記にあるように「地球温暖化」「海水温上昇」により、早生まれの稚鮎はほとんどが死んでしまいます。親鮎も子孫を残すために産卵期を遅らせようとします。

しかし、落ち鮎釣り解禁日はそのままの設定です。要するに、鮎の産卵期と解禁日が重なってしまうのです。

このようなことも今後は考えていかなくてはいけません。

この夏は、野根川にたくさん遊んでもらったので、来年の春までは野根川を守っていく番です。台風も多く、なかなか良いコンディションで釣りもできなかったのですが、また来年のお楽しみということで!!

2018年9月 御処野 誠

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