- HOME
- 川ズームアップ!一覧
- ズームアップ!野根川
ズームアップ!野根川
野根川について思うこと
高知県東洋町を緩やかに流れ太平洋に注ぐ野根川は、際立った水質を誇る二級河川です。
しかし、この素晴らしい野根川周辺の自然環境も微妙に変化していますし、残念ながら、天然鮎も減少の一途をたどっています。
近海においても、この20年で海藻や魚の種類に明らかな異変が生じているようです。さて、そんな東洋町甲浦の湾内には、 世界的にも珍しいシロボシテンジクザメが産卵にやってくるポイントがあります。それはきっと、現時点では辛うじて「川と森と海」のバランスが保たれているコトによる自然の恵みだと思います。
この川にはいくつかの課題はありますが、川を保全する努力で、より素晴らしい“世界に誇れる川”になるだけの資質があります。
次の世代の若者たちに、貴重な野根川を保全し受け継いでいきたい、と思います。
野根川の概要
高知県と徳島県の県境に位置する貧田丸(ひんでんのまる)を源流とする野根川、
源流点は標高600m、その流程は約30kmで真ん中辺りが県境。上流は徳島県で、
高知県に入る中流から河口にかけてはなだらかな勾配の川。
年間降水量は日本の平均降水量の倍近い。6月と9月に特に雨が多い。
しかし、河口から6kmの間は砂礫層で、水を吸い込みやすい地層。
夏に瀬切れするのは地層に関係があるかも・・・
水が豊富な割には傾斜がゆるやかで、発電設備などの開発の手が伸びなかった
ため「水は県下随一」と地元で自画自賛されるほど美しい。
野根川の歴史
この川はその昔から、決して静かな川ではなかった。
記録によると藩政時代は雨が降り続くと大洪水となり、日照りが続くと下流の方には
さっぱり水が流れないという極端な現象を見せていた。
天保年間に時の庄屋と総老による用水路の設置、その後の農民たちのたゆまぬ努力に
よる堤防の建設により、次第に川は安定していった。
藩政時代から明治・大正時代にかけては、林業と造船で栄えた。上流の木材を伐採して、
イカダを組んで上流から流し、河口で水揚げしたのち、甲浦港から船積みして阪神方面に
出荷した。当時、野根川村は61隻の回船を所有し、造船所としても栄えたという。
野根川の歴史はそのまま治水工事の歴史であり、野根の盛衰記でもあるそうだ。
野根川の魚たち
それでは魚はどうか、野根川の特徴として、海と川を行き来する「通し回遊魚」が一番多く、アユ・アマゴ・ウナギ・オオウナギ・ハゼ類や希少なアユカケも棲息している。それらの多くは、海から川に、それも上流部まで遡上する性質があります。河口にはヒラスズキやアカメもいる。
在来種を主とした魚の生態系があり、ブラックバスやブルーギルなどの外来魚はいない。
野根川の鮎について
鮎はそれぞれの川によって特徴がある。野根川の鮎はやや小ぶりだが、香りが上品で生臭さが少ない。
また、身はしまって固く、骨と皮はやわらかい。
したがって、姿寿司やセゴシ、もちろん、塩焼、煮つけ、干ぼしなどとても美味しい。ウルカも絶品です。
2001年第4回清流めぐり利き鮎会のグランプリを受賞している。
天然鮎の復活による経済波及効果は計り知れない。
野根川にある、4基の頭首工
河口付近の景色、旧野根川橋より
アユの産卵環境としては合格。
魚道の整備と親魚の確保が緊急課題。
それにしても河口付近の砂・・・
以前はここまで埋まっていなかった。
大斗第一頭首工、魚道はあるが・・・
ここは魚たちの関所・・・
魚道改修により魚介類の移動性が大きく向上する!?
中流から上流域の河畔林は、植林が占める割合が高い
森林はどうか、
中上流域は、スギ・ヒノキ植林と温暖帯二次林。一部の原生林は、「環境省特定植物群落」に指定されている。
自然林への自然更新に期待するも、この辺りの河畔林は樹齢豊かな針葉樹林地帯で、おみごとです。
植林地帯の適正管理により、土砂流出を抑えることができているようですね。
東谷川上流部、自然林の素晴らしい景観です
上流部の道路計画や広域の皆伐などによる土砂の流入がないことを願っています。
野根川上流部の魚道が開通しました!海陽町さん、ありがとう!
土砂などで埋まっていた魚道が海陽町さんの保全活動により開通しました。バンザイ!!
まだ、上流部には魚道のない堰堤が点在していますが、ひとつづつ解決して、海に降りたアマゴがサツキマスになって戻ってきて
産卵できる環境をできるだけ整備することができればいいなと心から願います。
文:水谷要