山口直哉「森と水の四方山話」vol.03
今シーズンの中禅寺湖は、例年と比べ1週間〜10日ほど季節が早く進んでいます。
5月に高温日が続いたことが山の四季に影響を及ぼしたようです。例年GW後半に咲く湖畔のオオシマザクラは4月30日に咲き、エゾハルゼミも連休中に鳴き始めてしまうほどでした。
前回にもお話ししましたが、季節は釣りをする上でとても重要で、気温や湖水温、開花情報、昆虫の出現など、東京に居ても常に季節の移り変わりを感じ、アンテナを張り巡らせています。
釣行計画を立てる上でも、季節の移ろいをしっかり把握しておく必要があります。「去年は6月10日がモンカゲ釣りにドンピシャのタイミングだったので、今年は8〜10日と休みを取ったらモンカゲは全然居ませんでした」なんてことが起こらないように、そして起きてしまっても釣行が無駄にならないように次善策を立てるなど、万全の準備をします。
今年の中禅寺湖は、5年振りにワカサギが居ます。
「居ます」というのは変な言い方になりますが、ワカサギ自体は毎年自然繁殖で存在しますが、今年は2011年以来久々にエサと成り得る量、つまり「まあまあ居る」という意味です。
ワカサギはマス類にとって、エサの少ない冬場の貴重なタンパク源であり、この小魚の多少がマス類のコンディションを左右し、釣り方にも大きく影響します。
5月に大量発生するユスリカ、5月下旬から6月初旬にかけてのモンカゲロウ、5月下旬から6月下旬のエゾハルゼミ、それにワカサギなど、小魚が中禅寺湖のマス類の主なエサです。
中禅寺湖のマス類は適水温8〜12度になるとエサを求めて頻繁に浅場を回遊します。それは5月下旬から6月初旬にかけての、モンカゲロウやハルゼミの発生、ワカサギの産卵のための接岸の時期と重なります。
これらのエサとなる生物の種類や発生量が順調で、かつ多ければ多い程ほど釣りは楽しいものになります。
ボクがこの時期メインに狙うブラウントラウトはかなりの偏食傾向があり、個体Aはセミのみを偏食、個体Bはワカサギに偏食と、それぞれの食べているエサに合わせて狙わないと釣れず、その読みがピタっとハマり良い結果が得られたときの喜びは大きなものです。
また、エサが多いと当然魚体のコンディションも良くなり、それはヒキの強さ、さらに魚体の美しさにもつながります。因みに今年の魚はワカサギが乏しかった去年、一昨年と比べ、同じ長さで1.5倍ほどの体重があります。
この画像は、5月下旬南岸エリアで、接岸しているワカサギの群れに何度も突っ込んで来て、派手な捕食行動を繰り返していたメスの個体です。フローティングワカサギのパターンで釣れたこの魚の長さは45.6cm程でしたが、筋肉質で太い魚体から繰り出すパワーはすこぶる強く、ジャンプしまくりのジャジャ馬娘でした(笑)。
この日この場所ではハルゼミも落ちて流れていましたが、マス達は無反応でした。
次の画像は、ジャジャ馬娘をリリースして2投目、またしてもフローティングワカサギパターンにガボンっと出てくれました。均整のとれたイケメンブラウン(笑)は、ボイルやライズは一切しませんでしたが、捕食スイッチが入ったのか、水面に浮いたワカサギフライを食ってくれました。
日本では中禅寺湖だけに棲息しているレイクトラウトは、近年個体数が増え、他の魚種への悪影響が懸念されています。また魚食性が非常に高く、産卵は他の鱒類と異なり、河川遡上型ではなく湖水の湧水が豊富な場所で行なわれると言われています。適水温は9℃前後と他の鱒類より冷水を好み、水温上昇と共に沖の深場に移動します。
この魚は6月上旬、水温13度でフローティングワカサギのパターンを食ってきました。取り込むまで65㎝オーバーのブラウンだとばかり思っていましたが・・・まんまと騙されました(笑)。
個体数が増えたことや、ワカサギ、ヒメマスなどのエサ不足や温暖化という条件が重なり、高水温に順応して来ているのかも知れません。
この原稿を書いているのは6月中旬です。シーズン後半はどうなるのかと、あれこれと思いを巡らせ、コーヒータイムを満喫しています(笑)。