新潟県・大川
「ズームアップ!大川」(詳細情報)はこちら!
「ズームアップ!大川 vol.02」(稚鮭の放流取材)はこちら!
「ズームアップ!大川 vol.03」(アユの遡上取材)はこちら!
前からとても魅力を感じていたエリア、新潟県村上市の北部山北地域。国の名勝に指定されている「笹川流れ」の海岸線には南北に800mクラスの新保岳や葡萄山を筆頭に、500mクラスの山々が連なり、たくさんの川があります。その北側を流れる大川水系の大川を訪ねることにしました。
まずは、大川の河口、岩崎の信号で車を止めて海を見ると〜どうですか、このキレイさ!
ハマボウフウが自生しています。山菜として食用にするほか、漢方薬としても利用されます。
いろいろな河口を見てきましたが、自然に海に溶け込むような流れは珍しいな、というのが第一印象。
河口は川の終着駅、遥か20キロ上流からの流れを想像して、この大川にとても興味を持ちました、裏切らないでよね・・・と頭の片隅で思いつつ。
人生になぞらえるわけではないけれど、これだけ美しくその旅路を終えるには、多くの人々との長い長い歴史があるだろうし、たくさんの努力があった、いや今もあるだろうし、多くの実りをこの地域に分け与えたことだろうと、つらつらと考えながら、まずは村上市山北支所 産業観光室長の富樫さんにお話しを伺いました。
富樫さんの丁寧なご説明から、まず、地域住民が大川をとても大切にしている印象を受けました。山北地区では雑排水の浄化センターを稼働させており、その普及率70-80%、支線工事を進め100%を目指してゆくなど、とても意識が高いですよね。
もともと、この山北地域は林業の町であったため、地ごしらえのために山を焼いて副産物としてアカカブを育ててみたり、ブナ・コナラ・ミズナラなどの広葉樹林を大切にしたりと、随所に地域と共生するために先代から続く人々の知恵を感じ取ることができました。
その他にも鮎の解禁前の川の清掃や草刈りなど、川に対する思い入れが滲んでいます。だから大川の鮎は豊かな芳香で満たされているのだと。
富樫さんのつぶやき、“自分たちの子供のころは、アカザというトゲのある魚がいたけど、今は全くいなくなった”そうである。
この“大川の清流”をして生物多様性は損なわれつつあるということか、詳しいお話しを大川漁業協同組合の皆さまに伺いました。
このお三方は、大川漁業協同組合の皆さまです。中央が渡部(わたべ)代表理事組合長、右側が青木理事、そして鮭鱒増殖部会長の本間さんです。
渡部組合長にお聞きしました。
鮎については、放流義務があるので10万匹ほどの放流はしているそうですが、5月には海からキラキラと真黒な稚鮎の大群が上ってくるそうです。
天然鮎は25cmくらいまで成長するそうです。やはり、芳香の素晴らしいアユなんですね。上流域にあった鱒の養殖場や家畜の飼育場も無くなり、ダムもなく水質は良くなっているそうですが、やはり、昔と比べて変化が出てきているといいます。
たしかにアカザ(ギギ科アカザ属)はいなくなったそうです。
その他にも、川エビやイトヨは全滅状態で、川ヤツメやウナギも激減状態だそうです。
さて大川を遡っていくと、河口から2km程で中継川と小俣川が合流している地点に着きます。まずは、中継川を遡上していきます。
話は変わりますが、大川には古くから受け継がれている全国的にも類を見ない鮭の伝統漁法「コド漁」があります。
晩秋から初冬にかけてたくさんの鮭が群れをなして帰ってくるのですが、それを心待ちにしていた漁師たちで、川原もにぎわい活気づきます。最盛期は9月から12月中旬で、流域はコドで埋め尽くされます。
「コド」とは、川底に杭を打ち、その杭に竹や杉の皮、ヨシ、柳などを取りつけ、鮭を休息させる装置のことで、コドに入ってきた鮭を鉤でひっかけて捕獲します。最近主流となっている、シンプルなコドのことを「もっかり」とも呼ぶらしいですが、アイヌの鮭漁の仕掛の名称に由来しているそうです。
この川の鮭たちには、コドをかわして上流まで遡上して自然産卵するものがたくさんいるそうですが、そこには、乱獲を良しとしない大川漁協の皆さんの自然の恵みに対する温かい眼差しと地域への愛情を感じます。
もっと中継川の上流へ行きましょう。
山熊田集落の周辺まで、サクラマス・ヤマメ・イワナの自然産卵のポイントなのだそうです。
ここは山熊田の橋の上、この辺りがサクラマスたちのゴール地点のようです。
なるほど、絶好の産卵ポイントですよね〜。
山熊田では、シナの木の皮を原料にすべて手作業で織り上げる工芸品「しな織り」や8月に山を焼き、種まきをした赤かぶの「赤かぶ漬け」などの体験もできるそうです。
http://yamakumada.shinafu.jp/
さて次は、小俣川を遡ってみます。
すると程なく、杉平の木材コンビナートの前にあるのがこの堰堤です。この堰堤は2mくらいの落差があり、増水時を除きほぼ鮭やアユなどの渓流魚にとって魚止めの堰堤です。画像の中ほど右岸にコドがありますが、小俣川では最上流のコドということになり、最も人気の高いショバのようです。
渡部漁協長にお話しを伺いましたところ、来年度、この堰堤の改修事業が決定したそうです♪
そうなると魚道も完備され、魚たちはもっと上流まで遡上できるようになります。そして多くの通し回遊魚にとって、海と川を自由に行き来できるようになるわけで、そんな大川のこれからが楽しみです。
今年の10月中旬、2015年の収穫です。今、上がっているのは身の赤い銀鮭のようです。これから白鮭が上がってくるそうです。
次回は、コド漁の画像や勝木川をリポートしますね。
◎「ズームアップ!大川」はこちら
ウォーターズ・リバイタル・Pj.が大川について思うことや、大川のコド漁や鮭の稚魚について書いています。上記のリンクをクリックして、ぜひご覧になってください。
◎大川に関する情報やご意見はこちら
info@kawariva.comにお送りください。
文:水谷要