ズームアップ!大川

大川のこと、そしてコド漁
この川を歩くほどに、大川の魅力に惹かれていく気がします。大川一帯に感じる時の流れは、いったい何なんだろうかと?

大川の鮭のコド漁は9月中旬から始まります。
勝木神社のお祭りのころを合図に鮭が川を遡上し始めるそうです。正式には筥堅八幡宮(はこかたはちまんぐう)という社叢(しゃそう=神社の森)だそうで、国指定天然記念物であり、海へ突き出たような約80mの小高い岩山の山頂にあります。
神の山として社叢内を保護したため原始林層が保たれており、カヤ・アサダの大樹は、県内一と言われているそうです。

筥堅八幡宮

筥堅八幡宮

その頃になると、大川の漁師さんたちは喜々として大川に集まって来るそうです。350年前からこの川で続く、他に類のない伝統的な漁法、コド漁。
コド漁とは、川底に杭を打ち、その杭に竹や杉の皮、ヨシ、柳などを取りつけ、鮭を休息させる装置のことで、コドに入ってきた鮭を鉤でひっかけて捕獲します。

大川漁協 青木理事の雄姿

大川漁協 青木理事の雄姿

自身で仕掛けたコドにやって来る鮭を手鉤棒で、腕一本で吊り上げる。そこには“今年もよー帰ってきた!”という感謝の心が溢れています。そして、その命と真っ向から向き合う姿には、自然への敬いと感謝に漁師としての歓びが共存した、とても魅惑的な空気感が漂います。

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自らを省みて、利便性や合理性がイキ過ぎちゃうと、生きる喜びや張り合いがなくなってしまうかなと・・・
これは自戒のひとり言。

350年の歴史なんて、一口にはとても言えません。
時代がいかに変わろうとも、世の中の常識が変わろうとも、伝統を守ることは、むしろ進化なのではと思いました。
どこか、豊かな情操のようなものが伝わってきます。必要な分しか捕らない。人と川が同化している、自然と人が共生していると感じさせる素晴らしい川、山北の大川はそんな川です。

ですから当然、自然産卵する鮭もたくさんいます。和留澤橋の下で産卵中の鮭に遭遇。いたるところで鮭の自然産卵。ここは、どこ? と驚いた瞬間です。


鮭の水中の様子を動画で紹介します。
まずは、和留澤橋から撮った遡上する鮭。

次に、水中から撮った遡上する鮭。

キラキラについて、
さて、話は変わりますが、この地域で9月中旬から始まる鮭漁は、早生(わせ)鮭とよばれるサケの遡上から始まるそうです。
どうもこいつはシロザケとは違う種類らしい。
遡上期でもギンピカらしい。
脂も多くて、早目に喰わないと脂焼けするし、伝統的な保存食には適さないみたい。

たぶん、亜種ではなく別種のサケマス!! だったら面白い。この辺りの漁師さんはキラキラと呼んでいるそうですが、何故かメスが多く、身は真っ赤だそうです。

キラキラのイメージイラスト

キラキラのイメージイラスト

そのキラキラが、12月25日に鮭鱒増殖部会長の本間さんのコドで捕れました。そのキラキラは、珍しくオスの大型だったそうです。
さすがにこの時期のキラキラは、川に入ってから時間が経過しているので、それなりに脂は抜けるそうですが、明らかにシロザケとは違う特徴があるそうです。
漁期終盤のこの時期でも完全銀毛で、全く別物だそうです。ぜひ、見てみたいですね。

そしてこのキラキラは、人工孵化させていないので自然産卵しているようです。産卵期も早く、9月下旬から10月初旬に河口から5-6kmの地点で自然産卵するものがいるようで、降海は2月末頃。

このキラキラの自然産卵は、この地域の人々と自然とが共生している、そんな伝統がもたらした恩恵なのでしょうか。

大川を遡上中のシロザケ

大川を遡上中のシロザケ

箱眼鏡で水中を覗く青木さん

箱眼鏡で水中を覗く青木さん

鮭の稚魚たち
そんな大川水系の鮭たちの遡上は、11月中旬にピークを迎えます。
いよいよ鮭の採卵が始まります。大川では11/20スタートしました。

各集落で絞って、孵化用の生簀に移します。水温14℃以下で、1ヵ月で目がつくそうです。

孵化用の生簀へ

孵化用の生簀へ

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12/20には孵化盆に入れます。
10日くらいで稚魚になって網目をすり抜けて下に落ちて、真っ赤に群れる。それから20日ほど経つと成魚と同じ形になってエサを求めるようになる。つまりここまでで2ヵ月、配合飼料で2ヵ月間飼育して、3月末に放流する。4ヵ月間の稚魚との生活です。


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全長18㎜くらいの稚魚

全長18㎜くらいの稚魚

この時期、水温は12℃弱

この時期、水温は12℃弱

地下水を汲みあげて曝気(バッキ)という方法で、空気中の酸素を水に溶かす為の槽から水を落として孵化場に入れる。水中のエアが大切らしい。

水中のエアがポイント

水中のエアがポイント

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これが、曝気する水槽

これが、曝気する水槽

曝気層の設置されている裏庭には、すっごい“タラの芽”の林があります。この林は、山畑の好きなご夫婦の手づくりだそうです。
春先にぜひ、ご相伴にあずかりたいです。

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勝木川について思うこと。 そしてアユたち。
大川のお隣の勝木川、こちらも大川漁業協同組合の管轄している、笠取山付近を源流とする、とても豊かな川です。
大川と違うのは、河口から数百mのところにウライを設置していること。
11月中旬、勝木川を訪ねてみた。
やってるやってる!! ウライの名手がいて、どんな鮭も一発必中で仕留める。その姿は、まるでヒグマのような凄腕でした!
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ウライの設置は9-12月で、鮭漁が終わるとウライは撤去され、この川は豊かなアユの川になります。
五月には、天然遡上アユでこの川も賑わいます。
ただ、この川には2基のえん堤があって、魚道はあるけど全くアユの登れないシロモノ、それがとても悩ましいです。
海から2kmのところに1基、そこから上流2kmのところにまた1基。

海から2km地点

海から2km地点

海から4km地点

海から4km地点

鮭鱒増殖部会長の本間さんに聴きました。えん堤の魚道に横板を貼って流れを緩やかにすると若干はアユが登るそうです。あとは、漁協の人たちがすくって上流に運ぶ、いわゆるバケツリレーに頼っている。漁協の皆さまのご努力に敬服すると同時に、なんだか、おかしいですよね!
治水・利水は大切ですが、せめてアユなどの通し回遊魚が川を遡上できるえん堤でないと・・・。

何か、えん堤と魚道の設計プロセスに問題があったのでしょうか?
それこそ、水産資源保護法22条に違反した状態ですよね。この川のえん堤が改修されて、もっと上流までアユが遡上できる素晴らしい勝木川が誕生することを願ってやみません。

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新潟県村上市山北地区の大川と勝木川、大切にしたい日本の豊かな恵みのある清流。もっと、もっと元気になってほしい。

文:水谷要

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